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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

消えうせたへや

大きな新聞紙の包みをこわきにかかえていた。

かれはニヤニヤ笑いながら、無言のまま、ふたりのほうへ近よってきた。こちらはいっそうひしと抱き合って、じりじりとへやのすみへ、あとじさりしていくばかりだった。

消えうせたへや

それから少したって、へやの外ではレンガ積み作業がはじまっていた。さっきの運転手が、上着を脱いで、ミックスしたセメントをコテですくいながら、一つ一つレンガを積み上げていた。

「やあ、ご苦労、ご苦労、なかなかはかどったね。うまいもんだ。レンガ職人をやったことでもあるのかい」

殺人請負会社の専務取締役、小男の須原がちょこちょことやって来て、声をかけた。

「ヘヘヘヘヘ、ご冗談でしょう。こう見えたって、子どもからのやくざですよ。レンガなんかいじくるのは、今がはじめてですよ。しかし、人のやっているのを見たことはある。見よう見まねってやつですね」

この運転手は、須原の手下の斎木という男であった。よほど信任を得ているらしい。

「おれもてつだうよ。きみはコテのほうをやってくれ。おれはレンガを並べるから」

「オッケー」

職人がふたりになると、みるみる仕事がはかどっていった。