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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

それはね、こういう方法なのです……」

影男はそれから二十分ほど話しつづけた。

小男須原はそれを謹聴していたが、すっかり聞き終わると、はたとひざをたたいて、「ふうん、なるほど、考えましたね。いかにも斬新きばつの名トリックですよ。これなら、どんな名探偵だって、わかりっこありませんよ。ありがとう。ところで、それはいつ実行しますかな」

「もう建物はでき上がっているんです。早いほうがよろしい」

「で、そのあなたのレンガ建ての書斎はどこにあるのです」

「世田谷区のはずれの蘆花公園のそばですよ」

「一度、下検分をしておきたいものですね」

「よろしい。それでは明後日の夜八時ごろがいいな。世田谷のぼくのうちをたずねてください。そのころには、書斎の家具などもはいっているでしょう」

といって、自宅への道順を教えた。

「では、そういうことにしましょう。いや、おかげで、わしも安心しました。やっぱり、あんたの知恵袋はたいしたもんだ。そういう名案があろうとは思わなかったですよ」

須原はほめ上げながら、心中ではペロリと舌を出していた。この男は、自分が殺されるのも知らないで、完全犯罪の手段を教えてくれた。