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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
うしろにねじあげられた両の手首に、細引きがグルグル巻きついてきた。それから、両方の足首にも。そして、ごていねいに、さるぐつわまではめられてしまった。
「ハハハハハ、きみにも似合わないゆだんだったね。まさかこの森の中に伏兵がいようとは、思いもおよばなかっただろう。これで、つまるところ、わしの勝ちというわけだね」
小男は息を切らしながら、毒口をたたいた。
もうひとりの男は、影男は知らなかったけれども、昌吉と美与子のふたりを小べやの中に塗りこめたとき、ドアの外のレンガ積みをやったあの斎木という運転手であった。
「さあ、急いで車まで運ぼう」
小男のさしずで、ふたりがかりで影男をかかえ、森の奥深くはいっていった。そして、神社の境内を囲む生けがきの破れから道路に出ると、そこに一台の自動車が待っていた。
影男はその後部席に押しこまれ、須原がとなりに腰かけて監視役をつとめた。運転手は前部席にはいって、ハンドルを握った。車はゆっくりとすべりだした。
徐行させながら、運転手はうしろを振り向いて、殺人会社専務取締役の須原に話しかけた。
「専務さん。実はちょっと心配なことがあるんです。