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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
一見して、正規の逮捕状であることがわかった。
これはいったい、どうしたことだ。地底世界の経営者が内通したのだろうか。あのちょびひげが、友誼にそむいて警察に知らせたのであろうか。そんなことはありえない。この地下装置による不当営利事業をその筋に知られたら、かれも重い処罰を受けるはずではないか。かれではない。かれが内通するはずはない。では、いったいだれのしわざか?
「おい、須原君、きみの部下の運転手はどこへ行ったのだ。その辺に見えないじゃないか」
影男が恐ろしい顔で須原をにらみつけた。
「うん、わしもさっきから、それが気になっていたのだ。オーイ、斎木、斎木はいないか」
その呼び声に、うしろのほうから黒衣の人々をおしわけて、運転手の斎木が顔を出した。そして、両手をさし上げているふたりのこっけいな姿を見ると、驚く様子もなく、ニッコリと笑って見せた。
「おふたりとも、もう年貢の納めどきですよ」
腹心の部下と信じきっていた斎木が、思いもよらぬせりふを口にしたので、小男の須原は、アッとぎょうてんした。顔は紫色になり、まぶたから飛び出さんばかりの目で、食い入るように相手をにらみつけた。