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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
もじゃもじゃ頭が目じるしだった。
「アッ、きみはもしや……」
「私立探偵の明智というものだよ」
相好の変わった運転手が、ニコニコ笑っていた。あたりがシーンと静まりかえった。影男も、須原も、急にはものがいえなかった。
やっとして、須原が不思議にたえぬ顔つきで口を切った。さすがにかれは、一瞬のろうばいから、もうおちつきを取りもどしていた。
「ふん、あんたが音に聞く明智先生ですかい。お見それしました。だが、いったい、いつのまに……? 変装の名人とは聞いていたが」
「六本木の毒ガスと塗りこめ事件の少しまえからね。斎木がどこかぼくと似ているのをさいわい、ぼくは斎木をある場所に監禁して、こっちが斎木になりすまし、きみの忠実な部下となった。そして、たった今まで、忠勤をぬきんでていたというわけだよ」
明智はやっぱりニコニコ笑っていた。
「ハハハハハ、これはおかしい。すると、きみは人殺しのてつだいをしたわけだね。篠田昌吉と川波美与子を毒ガスで殺して、へやの中へ塗りこめたとき、きみはレンガ積みまでやったじゃないか。ガスのネジをあけたのもきみだ」
「それがたいへんな思いちがいだというのさ」