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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

化けものどもは黒い覆面ずきんと黒いガウンで全身を包んでいるので、正体は何者ともわからなかったが、かれらが人間であることは、その肢体から、またかれらが皆女性であることは、その話し声から推察できた。

地下室は十坪以上もあった。床にはネズミ色のじゅうたんが敷きつめられ、天井と壁はコンクリートのはだがむき出しになっていた。天井からさがったコードに、二百ワットのはだか電球が輝いていた。

十数人の怪物は円陣を作り、その一方の端に立っているひとりが演説口調でしゃべっていた。それは中年の女性の声であった。

「皆さま、われわれはこの一年間、そのときどきの幹事のかたがたのご努力によって、普通社会では見ることのできない怪奇異常の光景を見、あらゆるスリルを味わい、戦慄を楽しんでまいりました。われわれは、いかなる猟奇の男性も味わいえないほどの、極度の妖異を経験してきたのであります。あるときは深夜の墓地に死人と語りました。あるときは強盗暴行の犯人を囲んで、その体験談を聞きました。あるときは多くの男性裸体モデルを雇って、写生と写真撮影に興じました。あるときは男女混合の覆面舞踏会を開いて、抽籖でパートナーを定め、一夜の自由行動を許しました。