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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
第十九章 九月二十三日午後十時―十一時
緊張が部屋いっぱいみなぎっている。
大矢捜査主任はつとめて冷静に、しっかりした態度で立ち上って命令した。
「さア、出動だ。十時七分前か。八雲先生が来合せて下さったのは幸運だ。さッそく御足労ねがいましょう」
八雲医師は緊張しきっていた。
「ヤ、どうも、一刻を争いますよ。さア、いそぎましょう」
八雲医師が誰よりも、いそいでいた。
彼は留守をまもる刑事にふりむいて叫んだ。
「あいにく遊山の帰りで、商売用のカバンを持ってきていません。私の家へ電話をかけて、看護婦に、カバンを持って倉田家へ最大急行するように、電話しておいて下さい。警察用のカバンと仰有れば、すぐ分ります」
「そうだ。看護婦さんへ迎えの自動車をやれ」
大矢警部はこう叫びを残して、一同はただちに倉田家へ急行した。
第十九章 九月二十三日午後十時―十一時
我々はナダレを打って現場へ駈けこんだ。定夫の部屋の前の廊下である。
定夫は廊下に俯伏しているのだ。一目見てすぐに瀕死の様子に見えたが、抱き起してみると、両眼をハッキリ見開いている。変に澄んで物悲しそうな、静かな目だ。ハナをダラリとぶらさげ、口から泡のようなヨダレをふいている。