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しそうとしてのぶんがく

思想としての文学

戸坂 潤

「思想としての文学」三笠書房、1936(昭和11)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,809 字 · 408 页

青空文庫

実はノルマルというのは、普通ということは、ノルム的、規範的ということなしには考えられないので、つまり、健康とか健全とかいうのは、普通なことで特別変ったことでないにも拘らず、之からはずれたものを矯正し得べき規範を意味するのだ。今云う常識(例えば社会常識の如き)は、こういう規範を指すのである。もはや単にある程度に発達した処の、併しまだそれ以上に発達しない、というような、消極的な平均状態を指すのではなくて、積極的に偏向を矯め得る正常な規範を夫は意味する。之が常識の第二の意味だ。

この第一常識と第二常識とは、今見て来たように、完全に別なものではあり得ないにも拘らず、二つは食い違ったクロスした状態に置かれていたことを注目すべきだ。二つはただ矛盾したり撞着したりするのではない。もしそうなら常識という言葉が不当に不便に出来ていたまでで、一方を常識と呼び他方を他の言葉で呼ぶことにするか、それとも一そ双方とも別な言葉で呼ぶことにすれば、困難は一ぺんで解消して了うわけだが、実はそう単純にはこの関係は出来ていない。方向がお互いに逆なのではなくて、方向が食い違っているのである。