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しそうとしてのぶんがく

思想としての文学

戸坂 潤

「思想としての文学」三笠書房、1936(昭和11)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,809 字 · 408 页

青空文庫

6 批評家の客観的公正

(一九三三・五)

6 批評家の客観的公正

批評が一等発達していないのは自然科学の領域に於てである。自然科学は同じく科学乃至学問の内でも、特に実証的積極的なもので、従って批評的(消極的)なものの反対をさえ意味する、とも考えられている。云うまでもなく、もののこういう考え方一般は、ブルジョア実証主義の偏見に充ちた公式を用いているのだから、それ自身誤っているのは断わるまでもないばかりでなく、元々その相手が批評主義、批判主義なるブルジョア形式主義哲学の内から選ばれているので、今日の問題としては思想的科学の発達の歴史の上から云って、全く見当のはずれたものなのだ。

だがそういう思想的科学の上では科学的にもはや意味を失って了った考え方も、自然科学者自身のものの考え方には、常識的な直覚として残っていることを少しも妨げないのであって、彼等の或るものによると、科学は本来から云って一般に、批評すべからざるもの、批評を必要とさえしないもの、であるかのように仮定されている。無論このような一種の独善的な確信は、今日のアカデミシャンに特有な悪質な迷信と非常識以外の何ものをも意味しないので、もし彼等の云う処が本当ならば、一体科学の歴史などは書けなくなるし成り立ちもしなくなるだろう。