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うんせききこう

柳宗悦 民藝紀行

柳 宗悦

柳宗悦『柳宗悦 民藝紀行』。同一底本的分册已合并为一书。收入:雲石紀行、沖縄の思い出、思い出す職人、樺細工の道、北九州の窯、現在の日本民窯、小鹿田窯への懸念、全羅紀行、台湾の民芸について、多々良の雑器、地方の民芸、苗代川の黒物、日田の皿山、北支の民芸(放送講演)、益子の絵土瓶、蓑のこと、野州の石屋根、陸中雑記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,050 字 · 276 页

青空文庫

衣川の漆器

なぜ東北の工藝に見るべきものが多いのか。それを信仰の暮しに帰すことは誤りであろうか。迷信は棄てていい。だが迷信の奥深くに潜んでいるある神秘なものをも棄てていいだろうか。私たちの生活にはこの神秘さがないばかりに、偽りの暮しに流れるのではないか。都会の工藝がなぜ醜くなったかの原因について想い廻らさないわけにゆかぬ。この鳥越の村の暮しと手仕事とを見て、私どもはこういう問いに入る。

衣川の漆器

衣川といえば誰も歴史に覚えがあろう。近くの平泉は金色堂の名において、藤原三代の栄華の跡を語っている。この地を過ぎて芭蕉が咏じたという「夏草やつはものどもが夢の跡」という句は、あるいは一番永く残るのかも知れぬ。だが私がここで語るのは、それらの名だたる史実についてではなく、小さな寒村にささやかな仕事を営んでいることについてである。

村の名は同じ衣川であるから、歴史に響いている所である。だが私のいう衣川は、衣川の村でも奥の奥で、その道を進めば秋田ざかいに出るという所である。陸中国胆沢郡衣川村増沢と正しくは呼ぶ。今は愛宕まで水沢から乗合が通うから、そこから一と山越えて一里余りを歩けばいい。