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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

お麗と母と、顔を揃えて出迎えた。

機嫌がいい。

しかし、修蔵には、余りものもいわず、晩酌がすむと、すぐに寝室へ入った。

かなり眠ったつもりだが、近くの太鼓は、まだ夜半には早かった。といっても、家人は皆、床についたはずなのに、裏庭で、物音がする。戸……跫音……。

「修蔵だな」

直感に、首をあげて、

「このごろは、だんだん遊び上手になって、わしが寝かけてから、抜け出しおる。よし、今夜――」

提げ刀で、雨戸を開けた。

母屋の裏から、迅い人影が、庭木のなかへ隠れた。伝右衛門は、とび降りて裸足のまま、そこへ駈けた。

「誰だっ。――盗賊か、修蔵か、これへ出いっ」

ずるずると、襟がみをつかんで、ひきずり出すと、

「あっ、おゆるしを」

「修蔵だの。……こらッ」

「…………」

「卑怯者、顔を上げい。……何じゃ、何じゃ、その懐中から落して隠した物は。見せろ」

「あっ、こればかりは」

修蔵は、両手で懐中を抱えた。その肩を、伝右衛門は思わずかっとして蹴った。お麗の大事にしている手筥が、転がった。銀の平打だの、べっ甲の櫛だのが散らばった。

「や……娘の」

こめかみに、青白い怒りを走らせて、伝右衛門は、修蔵の襟がみを掴み直した。