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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
すでに、その頃から、大谷刑部には、今の病気の兆候が皮膚にあらわれかけていた。彼の側に坐ることを厭む大名もあるし、大廊下ですれちがって、袂の触れぬようにして人は歩いた。
かまわないのは、誰よりも、太閤であった、無造作に彼に佩刀を預けることさえあった、多感なそして若い刑部は涙をこぼした事がある。――すると、ある時の茶会に、彼はもう一人、温かい人間に出会った。
それは、石田三成だった。
三成とは、十六歳からの知己なので、豊後の片田舎に郷士の子としていた自分の才を認めて、その頃姫路城にいた羽柴秀吉に話し、初めて、秀吉という人物と自分との機縁を結んでくれたのも実に、三成なのであった。
けれど――刑部はその後、自分も、秀吉の恩寵をうけて、一人前の男となると、必ずしも、自分を世に出してくれた三成が、傑出した人間とは思えなかった、才、正義、潔癖は認めていたが、何処か、冷たい理性家すぎる点を飽き足らなく感じていた、先輩として、恩人として、礼儀は執るが、好きになれなかった――どうしてもあるところ以上に深くなれなかった。
ところが。
その茶会では、自分の次に、三成が坐っていた。