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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

いずれ打首と覚悟している者は、陽時計の陰をみつめているような気持で。――また再び出られる見込のある軽罪の者は、その反対に一日一日を待って。――すべて自分らがここへ入って来た日から起算して、春なく秋なく日数で覚えているきりだった。

この牢の中では、一千六百四十幾日というのが古参だったが、当然、格からいっても、一段高い牢頭の坐るところには、わしが坐っていた。

その古参の男は、饅頭を圧しつぶしたような目鼻に、もじゃもじゃと髯が生えて、蜘蛛みたいな顔をしているところから、六兵衛と呼ばずに、蜘蛛六とよばれていた。

「やい、小僧小僧。こちらが牢頭様だ。先に御挨拶をしろい」

その蜘蛛六が、わしの前へ、たった今、役人に突き飛ばされて入って来た新入りの、なりの小さな男を引っ張って来た。

「おや、子どもか」

と思ったくらい、この中では、チビな男だったが、顔を見ると老けているし、挨拶もいやに小ましゃくれていた。

「商売は、何だ」

型のとおり、牢頭のわしから先ず訊くと、

「針売りの旅商人でございます」

と、いう。

「生国は」

「尾張の中村でございます」

「年は幾つ?」

「十八になりました」