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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页
「来たはいいが、――いいがだ。――てめえ一体、田舎の家は、どうして来たのか」
「田地も、馬も、家財も、金に代えて、ここに七十両程、持って来ましただ。伯ッ様の手紙も、よく分りますだが、何せい、思い止まれねえでがす。わしは、誓って、侍になって家名を興すと肚を堅めましたもんでな。どうか伯ッ様、わしを、侍にしてくんなさい」
「馬鹿ッ」
「へい」
「おおたわけの見本だぞ、てめえは」
「…………」
「いくら、山国で、ぬうと、陽あたりよく育ちやがったとはいえ、馬鹿さ加減にも、程があら。そんな世間か、江戸はな、浪人や無職者で、押し合ってるんだ。お上でも、持て余して、越中島の寄せ場へ、無宿人を集めたり、台場人足で、仕事をこさえたり、浪人徴募ってんで、ごろ浪人へ飯をくれて京都へ向けたり――」
「ま。あなた」
後妻のお村が、気の毒そうに、遮ったが、弁政は耳の蠅でも追うように首を振って、
「――いいか、そういう江戸だぞ。それでも、夜は、八刻といや、戸を卸し、御用党とか、攘夷党とか、浪士の押込みに、ふるえ上がってる不景気さだ。勿体ねえ、てめえなんざ、田舎に、じっとしてりゃ、庄屋の小旦那で、炉ばたの地酒でも食らってるか、茶のみ話に、稲の穂の勘定でもしてりゃいい身分。