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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

何という美しい乞食であろう。汚い着物に引きかえて、顔丈けは、汚れてもいなければ、栄養不良の為に憔悴してもいなかった。目鼻立ちのよく整った、真白な肌。だが、美禰子さんがあんなにもびっくりしたのは、乞食娘が思いもよらぬ美人であったことではない。

「マア、お前……」

さっき乞食の出現にビクともしなかった令嬢が、思わず立上って、ドアの方へ逃げ出しそうにした程だ。

「アア、嬉しい。お嬢さまにも、やっぱりそう見えるのですわね」乞食娘は、さもさも嬉しそうに叫んだ。「あたし、もう本望だわ。こんな見る影もない乞食の子が、総理大臣で伯爵様のお嬢さまと、そっくりだなんて」

事実、この二人、伯爵令嬢と乞食娘とは、一方は断髪で光った着物、一方はさんばら髪であらめの様なボロ、という点を別にすると、背恰好から顔形まで、双児といってもよい程、そっくりであった。

「あたし、勿体ないことですけれど、もうずっと前からお嬢さまとあたしと、生き写しの様によく似ていらっしゃることを知っていました。若し、あのお嬢さまに御目にかかって、一言でもお話が出来たらと、もうそれが、あたしの一生の望みだったのです。