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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

……

わたしは、奥さまにも、川村さんにも、やや様を里子におやり遊ばす様、どんなにお勧めしたかしれません。でも、お二人様はそんな事をしては、発覚のおそれがある。殺してしまうのが何より安全な手段だとおっしゃって、止める婆やをつきのけて、とうとう、こんなむごたらしいことをなすってしまったのです……。

忘れも致しません。丁度三月前の今日でございました。今日はやや様の御命日なのです。こんなとこに、葬うものもなく一人ぽっちでいらっしゃるやや様がおいとしくて、わたしはコッソリお詣りに来たのです。……

旦那様、イイエ、旦那様ではない、旦那様によく似たお方、婆やを可哀相だと思召して下さいませ。わたしは、もう一月も前に、瑠璃子さまからお暇が出たのでございます。正直者の婆やが、あの方達のお気に召さぬのでございましょう。国へ帰れといって旅費を頂いているのですけれど、ここに眠っていらっしゃるやや様がお可哀相で、つい一日延ばしに今日までグズグズ致して居りました。でも、そうそうは宿屋住いも出来ませんので、今日はお暇乞いにお詣りをしたのでございます」

語り終って、お豊はよよとばかり、地べたに泣き伏した。