轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
午後八時という定めの時間が近づいて来た。誰と誰との間に定めた時間だか、それは今すぐ申上げる。
そこで、わしは洗面所へ立つ振りをして、次の室へ這入った。無論そこもわしの借り切りになっているのだ。そして、ドアを締めると鍵穴に眼を当てて、今か今かと事の起るのを待ち構えた。
見ていると、その僅の間にさえ、離れているに耐えないのか、川村の奴はコソコソと瑠璃子のソファへ席を換え、彼女にすりよってその手を取った。
「およしなさい。里見さんが帰っていらっしゃるわ」
瑠璃子は満更らいや相でもなく、小声で男をたしなめた。
「ナアニ構うもんか。里見さんも薄々は感づいているのだ。先生僕等を似合いの夫婦だと云ってたぜ」
川村は美しい顔に似合わぬ図々しさで、ギュッと女の手を握りながら、
「だが、大丈夫かい。僕は少し気がもめるぜ」
と、早ややきもちを焼き始めた。
「アラ、何なの」
瑠璃子が空とぼけると、川村はわしの覗いているドアの方を顎でしゃくって、
「あの先生さ。君はどうも慾ばりだからね。子爵にさえ惚れたんだから、子爵の何倍という金持の里見さんは、いくら老人でも危いよ。君の様な虚栄女は、どうも不安で仕様がない」