轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
いまわしき前兆
「イヤ、世間には、我妻を疑って、嫉妬の余り、随分無駄な苦労をする奴もあるからさ」
「なんだって、嫉妬だって。だが君、嫉妬をしろと云っても、あの子供の様に無邪気な瑠璃子を、どう疑い様もないではないか」
わしがむきになって妻の弁護をすると、川村は他意もなく笑い出した。
「そうだね。本当にそうだね。瑠璃子さんは、雛菊の様に無邪気な乙女だね」
そして、彼はワーズワースの『雛菊の詩』を口ずさみ始めたものだ。彼は英詩の朗吟が巧であった。
わしはそれに聞き惚れた。そして、さい前の彼の変な言葉を、忘れるともなく忘れてしまったが、遠からず、あの会話をマザマザと思い出さなければならぬ様な、不吉な時がやって来るとは、神様でないわしに、どうして知ることが出来たろう。
二年の月日は、瞬く内にたってしまった。その間、これという変ったこともない。瑠璃子は益々美しく、わし達夫婦の仲は愈々睦まじかった。凡て凡て、極楽世界の四字に尽きていた。
いまわしき前兆
皆さん、わしのその二年間の様に、何から何までよいことずくめの折には、夢々油断をしてはなりませんぞ。運命の鬼奴は、甘い餌物を与えて、人の心をためすのだ。