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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

三人の客は、皆この部屋をよく知っている。住田医学士はただわしの奇妙な趣味を不思議に思っている様子だったが、あとの二人は、つまり姦夫と姦婦とは、これが恐れないでいられようか。瑠璃子の如きは唇の色を失って、立っているのもやっとの様に見えた。

川村は川村で、これも真青になって、床の間の一物を、不思議相に見つめている。彼が見つめるのも無理ではない。そこには、この古めかしい部屋にふさわしからぬ、新しい桐の箱が置いてあったのだから。

住田医学士もそれに気づいたと見えて、

「あれは何です。お茶の道具でもなし、人形箱でもなし、どうやら因縁のあり相な品ですね」

と尋ねた。

「因縁ですか。いかにも恐ろしい因縁のこもった品ですよ」

わしは不気味に答えた。

「ホホウ、益々怪談めいて来ましたね。是非拝見したいものです」

住田医学士はそう云いながら、併し、うそ寒く肩をすぼめた。

「マアお待ちなさい。これについては一条の物語があるのです。事実怪談ばなしなのです。殆ど信じられない程恐ろしい事柄なのです。ホラ、そこの畳をごらんなさい。大きな薄黒い斑点が見えるでしょう。何だと思います」

わしは講釈師の様に思わせぶりに話を進めて行った。