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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

この結婚には当の大牟田家の人達が反対を唱えていた位だから、親族の参列者は殆どなかったが、その代りにわしの金力に頭の上らぬ実業家連が、親族以上の熱心さで集って来た。

純白の洋式礼装をした瑠璃子は神々しい程美しく見えた。

彼女は商業会議所会頭夫妻に伴われ、二人の可愛らしい少年に裳をとらせて、しずしずと祭壇の前に現われたが、丁度午後の日光が、高い窓のステインド・グラスを通して、薄絹の冠りものを、赤に緑に染めなし、瑠璃子の身辺に五色の虹が立つかと疑われた。

花婿であるわしはと云うと、西洋流に胸の白い礼装はしていたが、白髪白髯に黒眼鏡という異様な姿だ。不気味な老人と白百合の様に気高い花嫁の対照が、参列者達に一種奇異の感を与えたに相違ない。

何かしら不吉な前兆の様なものが、式場全体に漂っていた。花嫁が美し過ぎたからか。花婿の白髪白髯のせいであったか。会堂の陰気な高い丸天井の為であったか。それとも、ステインド・グラスの五色の影の為せる業であったか。イヤ、それらよりも、もっと不思議なことがあったのだ。

そこには、故大牟田敏清の幽霊がいた。花婿は嘗て大牟田子爵が愛用していたのと寸分違わぬ燕尾服を着用し、手袋からステッキに至るまで、そっくりそのままのものを用い、その上、身振り、歩き癖、肩の振り方まで、昔の大牟田子爵をむき出し