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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

空を仰ぐと、降る様な星だ。黒い微風が、ソヨソヨと熱した頬をかすめて行く。

わしは立去ろうとして躊躇した。瑠璃子はどうしているかしら。

ふと気がつくと、どこからともなく、やさしい子守唄の声が聞えて来た。わしは何かしらゾッとして、聞耳を立てた。どうやらその声は洞窟の中から響いて来るらしい。

変だ。生埋にされた瑠璃子が、呑気らしく唄など歌う筈はないがと、気になるままに、鍵を取出してもう一度錠前をはずし、ソッと一寸ばかり扉を開いて、覗いて見ると、そこには実に異様な光景があった。

殆ど真ぱだかの瑠璃子が、腐りただれた赤ん坊の死骸を抱いて、くずれる様な笑顔でその赤ん坊をあやしながら、腰を振り振り、右に左に歩いていたではないか。

彼女は右手一杯に宝石を掴んで、それを、或は彼女自身の乱れた髪の毛の上に、或は赤ん坊の胸の上に、サラサラサラサラ、子供の砂遊びの様に、こぼしていたではないか。

「坊や、うッついでちょ。うッついでちょ。母あちゃまはね、女王様になったのよ。こんなに宝石があるのよ。ホラうッついでちょ」

訳の分らぬことを云って聞かせながら、又しても子守唄を歌い続けるのだ。