轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
暗黒世界
だが、皆さん、その様に恐怖すべき生き埋ではあったが、その生き埋さえも、それから、わしが経験した、歴史上に嘗て前例もない様な、苦悶、恐怖、驚愕、悲愁に比べては、物の数ではなかった。さて、それが、どの様に恐ろしい地獄であったかを、これからお話しようとするのだ。
暗黒世界
皆さん、人間の本能というものは恐ろしい。棺の中にいると悟ると、わしの手足に、死物狂いの怪力が、湧くが如くに集まって来た。必死の時には、必死の力が出るものだ。今この棺を破らねば、折角甦ったわしの命は、一時間も、三十分も、いや十分でさえ保たぬ。棺内の酸素が殆どなくなっていたからだ。わしは、水を離れた鮒の様に、口をパクパクやりながら、窒息して死んでしまわねばならぬからだ。
わしは頑丈な棺の中で、猛獣の様に跳ね廻った。だが、なかなか板は破れぬ。その内に空気は益々乏しくなり、息がつまるばかりか、目は眼窩の外へ飛び出すかと疑われ、鼻から口から、血潮が吹き出す程の苦しさだ。
わしはもう、無我夢中であった。板を破るか、我身が砕けて死ぬかだ。空気の欠乏の為に、ジリジリと死んで行くより、一思いに砕け死ぬのが、どれ程ましか知れぬとばかり、わしは死物狂に荒れに荒れた。