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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

六

嵐のような激しい音に、村川も倭文子も、気味のわるい圧迫を感ぜずにはいられなかった。

六

「わたくし、おやついただいて来るの。」

利口な美智子は、一座の空気が険悪なのを感ずると、そんな口実をうまく考えて、日本館の方へ走り去った。

「僕も。」

宗三も、すぐ妹の後を追った。

村川は、京子のすね方が、馬鹿馬鹿しかった。一緒にカーテンの後にかくれていたのが、どうしたというのだろう。だが、倭文子が、スッカリしょげてしまって、黙りこんでいるのを見ると、冗談ではない気がした。

「どうしたのです。そんなに、しょげなくってもいいじゃありませんか。何も悪いことをしたのじゃあるまいし。」

倭文子はだまっていた。

「京子さんは、怒りすぎますよ。」

村川は、そうもいってみた。だが、倭文子はなおだまっていた。ふと気がつくと、彼女の黒い眸を覆う長いまつげが、いっぱい濡れていた。村川は、軽いショックを受けて、自分もだまってしまうほかはなかった。

その涙が、倭文子の現在の生活を、彼にすっかり説明してくれた。

伯父の家に寄食している倭文子は、わがままで勝気ないとこの掌中に、生きているといってもいいのだった。