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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

七

「怒るべきことでないことを、怒っているのですからね。でも、僕が飛込んだのが悪かったのです。でも、こんなことで怒るなんて、馬鹿馬鹿しいですね。」

村川は、笑いごとにしてしまおうとしても、倭文子は、どうしても笑わなかった。

ヤケに叩き鳴らしていた京子のピアノの音は、ふっつり断たれてしまった。断たれてしまうと、倭文子は更に、不安になったかのように、首をうなだれた。

「僕が、ちょっと京子さんに会ってみましょう。怒っているわけは、ありませんよ。」

そういって、村川は気軽に倭文子の傍から立ち上ろうとした。

「いいんでございますの。」

倭文子は、とりすがるように止めた。

「でも、こんなことで、こだわっているのは、いやですから。」

そういって、村川は倭文子の傍を離れて、京子の部屋のドアの前に立って、ノックした。

七

村川は、京子の部屋のドアを、かなり強く叩いた。だが、中からはぷつっとも音がしなかった。

「京子さん。僕です。入ってはいけませんか。」

まだ、何とも返事をしない。

「京子さん。入ってはいけませんか。」

「いいわ。」

やっと、かすかな声で答えた。

村川は、ドアを開けた。