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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

五

決して。」

京子は、こんな男から小娘らしく思われるのが、いやだった。相手のいう通りにして、しかも一指もゆるすまじき品位を見せてやろうと思っていた。

「じゃ。日吉町へ。」

今井は運転手に命令した。

五

食事のとき、今井は、

「失礼して一杯いただいて、よろしゅうございますか。」

と、京子に断って、カクテルを注文したが、それがいつかウイスキーに変り、三杯となり、四杯となり、食事が終って、自動車に一緒に乗った時は、彼の白い顔が、微醺を帯びて輝いていた。

街は、すっかり夜になっていた。数寄屋橋から、すぐ右に折れ、丸の内の大道を滑るように走った。自動車の中には、さわやかな初夏の宵があった。

「今あすこに新橋の芸妓が三人いたの。ご存じですか。」

「存じています。あなたにあいさつした人達でしょう。」

「それまで、気がついていらっしゃるのですか。これは恐れ入りました。」

「わたしだってその位なこと、気がつきますわ。」

「ああいう連中を、あなたはどういう風にお考えになりますか。」

「美しい人達だと思いますわ。」

「そうですかね。僕は教養のない美しさにはあきあきしました。女性も、頭のない美しさは時代遅れですね。