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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
地上と地下
水罠にかかったのだ。
「畜生ッ、どこまで執念深い悪党だろう。僕達はあせればあせる程、却って最後を早める様なものだ」
だが、いくら憤慨して見たところで、水が引く訳ではなかった。
水面は已に腰に達した。しかも、滝津瀬は轟々と落ち続け、いつやむべしとも思われぬのだ。
地上と地下
明智と文代が、旗本屋敷に到着した時には、已に所管警察署から数名の刑事が屋内に踏込んで、部屋部屋を捜索していた。
明智が這入って行くと、波越氏から話があったと見えて、警官達は別に異議も云わず、寧ろ彼を歓迎する様に見えた。
「家の中はもぬけの空です、猫の子一匹いません」
主だった私服刑事が報告した。
「玉村さん親子四人のものが、地下室にとじこめられているのです。地下室は調べて見ましたか」
明智が尋ねる。
「ところが、地下室が見つからぬのです。どこに入口があるのだか、少しも見当がつきません」
刑事が困惑して答えた。
「イヤ、それなれば、僕の方に案内者があります。妙な因縁で賊の娘がこの出来事を密告したのです。……文代さん、地下室はどこにあるのですか」
明智が呼ぶと、文代は庭に面した縁側から駈け込んで来た。