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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

そして、妙子さんにピストルを二挺渡して、その鍵で内側から締りをして置く様に云って来たのですよ。で、誰かが、例えば君の部下が、あすこへ這入ろうとすれば、第一ドアが開かぬし、仮令それを叩き破っても、妙子さんのピストルで、お陀仏。と云う訳なのです」

源造は心を落ちつける為に、長い間黙り込んでいた。この様な強敵に対しては、慌ててはいけない。ゆっくり考えて、最善の手段をとらねばならぬ。

「で、つまり俺をどうしようというのだね。君は一人だ。俺の方には七人の部下がいる。おまけに、この船はどこへでも走り出すのだ。俺の云った人質というのは、なにも妙子ばかりではないのだぜ」悪魔は不気味な嘲笑を浮べ、いきなり人差指を明智につきつけた、「君だよ、人質というのは。飛んで火に入る夏の虫という、古いせりふがあったっけね。フフフフフフフフ」

彼は含み笑いをしながら、部屋の隅の机に近づいて、その抽斗を開き、何かを取出そうと、手をさし入れたが、探しても探しても、その品物がないのを知ると、ハッとして明智の顔を見つめた。

「君の探しているのは、これじゃありませんか。君の留守中に、抜かりなく拝借して置きましたよ。