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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
赤い頭巾をいただいたり、鬱金のくくり袴を着したり、紫の被衣をかずいたり、緋の襷であやどったりそうかと思うと男の中には、熊の皮の胴服を着たのや、猪皮の脚絆をつけたのや、そんな風采の者もあった。
つくり物らしい槍や長柄や、大鉞などをひっさげて、それらを時々宙で舞わし、踊りらしい所作などをした。
先頭には大幟りが翻っていた。
それに書かれてある文字といえば、
「東大寺勧進、諸国行脚、寄進奉謝、茨組」
という、訳のわからない文字であった。
今日で云えばサーカス団で、だから数頭の飾り立てた馬も、一行の中には雑っていた。
一行は大木戸の前まで来た。
と五六人の警護の武士が、バラバラとその方へ駈け出して行った。
「これこれ貴様たちは何者だ」
すると、彼らは愛想よく笑い、至極無造作に至極大胆に、いくらか人を食ったひょうきんな口調で、
「東大寺勧進、諸国行脚、寄進奉謝つつしんで頂戴の、茨組と申す興行者……」
「丹後の国をふり出しに、但馬、因幡、播磨、摂津と、打って廻りましてござりまして……」
「昨日この都へ参りましたところ……」
「何やら市中さわがしく……」
「斬った斬られた討った討たれた、謀反じゃ裏切りじゃと人心兢々……」