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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

「それもそうだな、ではソロリと……何を馬鹿な、たかが知れてる! えい開けろ! 開けろ開けろ!」

「ではソロソロあけまする」

頤髯の男は大鉞を、頭上に高くふり冠った。

が、もう一度嚇してみようと、そう思ったように範覚の方へ、ジロリと視線を送ったが、

「よろしゅうござるかな、ガ――ンと一撃! と、世にも恐ろしいものが……」

「まあ待て待て、何だそいつは?」

「ただもう世にも恐ろしい……」

「虎か? 唐土の……獅子か? 天竺の……」

「なかなかもちましてそんなものでは……」

「フーン」

と云ったがまた一足下がった。

「申せ申せ、正体申せ!」

「ガ――ンと一撃いたしまして、そのものが飛び出して参りましたら、おのずと解るでござりましょうよ。……さあ一撃! 命の用心!」

ギラギラと光る鉞を頭上で縦横に振り廻したが、

「イヤ――ッ」

ド――ッと一撃した。

「それッ」

と範覚が真っ先に逃げ、つづいて警護の武士たちが逃げ、群集たちもバラバラと逃げた。

檻の戸は微塵に砕かれた。

檻は大きい黒い口を、ワングリと開けて陽を吸っていた。

が、何んにも出て来なかった。

しかし人々は気味悪そうに、その口ばかりへ眼を集めた。