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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
姉の身の上をあげつらい、男禁制の肌断ちのと、云わでものこと云いおるぞ! ……男禁制も肌断ちも承知の上でかかった恋、なんのとげいでおくものか! ……その後は凡婦に帰ろうとまま、堕地獄の苦に悩もうとまま! ……さあこう明かした上からは、肉親でもなければ姉妹でもない! 恋の敵情慾の仇! ……ええ贄なんどに追いやるより、いっそ手短かに命取ってやろうか! ……それより汝の愛嬌顔、潰して醜婦にしてやろうわ! ……如意くらえ!」
と浮藻の顔の、真ん中どころを狙い澄まし、風を切って力まかせに打とうとしたとたんに猩々卯ノ丸が、楓の叉から二人の間へ、白布のように舞い下りて来た。
そうして次の瞬間には、浮藻の体を軽々と抱いて、数間のあなたに飛んでいた。
「卯ノ丸!」
と桂子は怒声を飛ばせたが、事があまりにも意外だったので、早速には二の句がつげなかった。
その間に卯ノ丸は浮藻を地に置き、自分でも地上へひざまずき、両手を胸の辺で合掌し嘆願するように悲鳴した。
「おのれが! こやつ! 畜生の身で!」
赫怒が桂子へ返って来た。
如意を高々と振りかぶり、
「元の主人に刃向かう気か! ……打ち殺してくりょう! おのれ逃げるな!」