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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
裾に血のりがついていたが、右手に持っている杖の先にも、やはり血のりがついていた。
でも、何んと頼春の顔は、明るく愉快そうで朗らかなんだろう。
頼春をとりまいている野武士たちは、いずれも太刀を抜き持っていたが、相手がこわいといったように、かなり遠くへ離れていた。
「……で、われら申し上げるのじゃ」
と、その中の一人の武士が云いついだ。
「われらの住居へおいでくだされとな」
頼春は笑って云うのであった。
「斬ってくだされとお願いしながら、よしそれでは斬ってやると、貴殿方お仲間のお二人が、親切にも拙者を斬ろうとすると、何んと忘恩のこの拙者の右手が、拙者の意志を裏切って、あべこべに親切なお二人の人を、ブツリと突き殺した、それのように」
「…………」
五人の武士はバタバタと逃げた。
が、すぐに忍び足して、数間の近くまで帰って来た。
「行こうという拙者の意志に反して、この足がどうにも動かぬのでござるよ」
黄味の深い秋の朝の光が、松の林の梢から、縞をなしてここへも射して来て頼春の足もとに揺れそよいでいる。熊笹の葉の上の女郎蜘蛛を、鉱物かのように光らせていた。
「この足が、どうにも動かぬのでござるよ。