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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

……が、これはもっともとも云えるて。……よい条件ばかりが揃っていて、悪い条件がないのだからのう」

すると、もう一人の武士が後をつけた。

「本来なれば、我らの仲間を、二人理不尽に討って取られた貴殿、許して置くわけには参らぬのでござるが……」

「あんまりお技倆が立派じゃによって……」と、もう一人の武士が後をついで云った。「招待しようと申しておるので」

「盲目でしかも片腕で、得物といえば竹の杖で、われらの仲間のその中にあっても、そうとうな沖田と毛利氏とを、一突きずつで退治た技倆……」と、四人目の武士が感にたえたように云った。

「前代未聞、凄いといわねばならぬ。……で、ご招待いたしたいというので」

「感謝」

と、頼春は愉快そうに云った。

「女があって酒があって、ご馳走があって寝具がよい、そういう住居へ来いといわれる。感謝! よろこんで参りますとも! ……ただで養なってくれるという! 感謝! 何んのお断りしよう! ……その上そこへ参っても、これといってやるべき務めもなく、これといって持つべき責任もない。いてくれさえすればよいという! 極楽じゃ、極楽浄土じゃ! このセチガライ戦国の世に、そんな極楽浄土がある! 行かなかろうものなら罰があたる! ……行こうぞ行こうぞ、行かいでどうしよう!」