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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「泥棒であるに相違ない!」
「…………」
しかしもう一人の武士がつづけた。
「一芸一能に秀でたお方を……」
「豪族へ売り込むという手もござるて!」
「…………」
「どっちみち……」ともう一人の武士がつづけた。「百聞一見にしかずと申せば……」
「残念、拙者盲目でのう」
「ナール」
「とはいえ拙者見えまする!」
「さてこそ!」
「心眼で見えるのじゃ!」
「…………」
松の枯れ葉が針のようにこぼれて、いまだ抜いたままで、鞘へ納めない、五人の野武士の五本の太刀へ、ひっそりと触れて行ったりした。
不意に頼春は決心したように云った。
「せっかくのおすすめとやかく申さず、貴殿方のお住居へ参るとしましょう」
それから口の中で呟くように云った。
「笠置の城の落ちるのも、ここ数日のうちであろう。と、神の界に属しまつる御一方が、この赤坂へおいで遊ばす筈だ。……それまでどこにいようとままよ」
「卯ノ丸よ、ここへおいで!」
桂子はこう云って手を拍った。
呼んでも卯ノ丸は来なかった。
芒の中へひざまずいて、何か恐縮でもしているように、むやみと辞儀をするばかりであった。
そうして時々うしろの方を見ては、そっちへ指さしをするばかりであった。