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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

正面に城門のような岩壁があって、道を遮っているからであった。

赤坂からはおおよそ三里。それぐらい距った地点らしかった。

ではこの辺りは千早と金剛山との、中間にあたっていなければならない。

千年も経たかと思われるような、二抱えから三抱えもある、杉や桧や樫の巨木で、あたりは隙なく鎧われていて、空など蒼い帯のようであった。

宵闇のようにあたりは暗い。

金剛砂で出来ているからであろう、谷の道は白かった。

その谷の道の左右には、金剛山の山脈が、眉を圧して逼って来ていて、それにも老樹や灌木が、すくすくと隙間なく聳えていた。

白い地肌に黄だの茶色だのの、縞や斑紋を沁み出させている、人工のように見える天然岩が美しくしかし厳めしく、手をかけるところも足をかけるところも、絶望的にない垂直さで、正面に聳えているのであった。

城門というより云いようがなかった。

桂子と右衛門とはそれを見上げて、茫然と佇んでいるのであった。

というのはここまで案内をして来た、猩々卯ノ丸がここまで来ると、姿を消してしまったからである。

そうしてそれまではいつも前方に、見えがくれしていた六人の男が、やはりここまでやって来ると、姿を消してしまったからである。