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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
そうして、このことは、宮家ばかりでなく、宮家の家臣の誰彼の眼にも、疑がわしく見えるようになってしまい、ある日村上彦四郎が、ひそかに宮家へ言上した。
「竹原入道の二人の息子、この頃の振る舞いちと審しく……」
「それじゃよ」
と、宮家は仰せられた。
「入道の誠忠には疑がいないが、左源太、右源次の二人はのう」
「戸野兵衛の息子大弥太は、熊野定遍の部下となり、勿体なくも宮家のご身辺を……」
「うむ、過日も蓬生が参って、泣く泣くそのことを申しておった」
「彼らこそまことに親の心子知らず……」
「…………」
「表立って敵対う輩には、備うべき手段もござりまするが、内輪にあって逆意持つ者には……」
「備うべき策にも困ずるのう」
「所詮十津川も安泰の地にはおわさず」
「入道や兵衛には気の毒ではあるが、早晩この地も捨てずばなるまい」
「捨ててさて宮家には?」
「吉野へ行こう、要害の吉野へ」
「至極の御事と存じまする、……この頃しきりに吉水院のもとより、ご来駕促がしおりますれば……」
「吉水院は完全に宮方。が、執行の岩菊丸は、首鼡両端を持しておるとか……」
「宮家吉野へおいで遊ばし、吉水院に御力を添え、岩菊丸を御抑え遊ばすこそ、もっとも肝要かと存ぜられまする」