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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
その女は操といって、祖母の姪の一人である。
操さんはこれまで一度も訪ねて来たことがなかった。手紙の往復さえろくにしていなかったように私は思う。だが、操さんは私のような下司な貧乏人ではなかった。祖母を初め、岩下家は上を下への大騒ぎでこの珍客をもてなした。
操さんは二十四、五の美しい女だった。一人の乳呑子をつれていた。
着いたとき彼女は、胸から裾にかけて派手な秋草模様のついた絽縮緬の単衣に、けばけばしく金紙や銀紙を張りつめた帯を背負っていた。その上、暑苦しいのに錦紗縮緬の半コートまでも羽織っていた。首には金鎖、指には金の指環、調和はとれないが一眼見てどこかの貴婦人だと思わせるような服装だった。
一通り挨拶がすむと祖母はすぐ操さんの着物に汗が泌み出ているのを認めた。
「おやまあ、みいさん、帯から着物から汗びッしょりじゃないか。脱いでお着更えなさいよ」
こう祖母が言うと、操さんも、
「そうですね、着かえましょうか」
と答えて、今着て来た着物をぬぎ捨てた。祖母は自分でそれを持って行って、一枚一枚叮嚀にひろげて日光にあてた。近所の貧乏なおかみさん達が水をもらいに来る井戸端からよく見えるところへ……。