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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
小学校は出来た。中学校も女学校も専門学校も大学も学習院も出来た。ブルジョアのお嬢さんや坊ちゃんが洋服を着、靴を履いてその上自動車に乗ってさえその門を潜った。だがそれが何だ。それが私を少しでも幸福にしたか。
私の家から半町ばかり上に私の遊び友達が二人いた。二人とも私と同い年の女の子で、二人は学校へあがった。海老茶の袴を穿いて、大きな赤いリボンを頭の横っちょに結びつけて、そうして小さい手をしっかりと握り合って、振りながら、歌いながら、毎朝前の坂道を降りて行った。それを私は、家の前の桜の木の根元に踞んで、どんなに羨ましい、そしてどんなに悲しい気持ちで眺めたことか。
ああ、地上に学校というものさえなかったら、私はあんなにも泣かなくって済んだだろう。だが、そうすると、あの子供達の上にああした悦びは見られなかったろう。
無論、その頃の私はまだ、あらゆる人の悦びは、他人の悲しみによってのみ支えられているということを知らなかったのだった。
私は二人の友達と一緒に学校に行きたかった。けれど行くことができなかった。私は本を読んでみたかった。字を書いてみたかった。けれど、父も母も一字だって私に教えてはくれなかった。