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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
すると、叔父はふふんと笑ってこともなげに言った。
「いやなことさ。いくら美人でもありゃあもう処女じゃないよ……」
そうだ、その頃、叔父の求めたものはただ処女だったのだ。そして私もまた、処女だったので、ただそれだけの理由で私を彼の妻にするといったような馬鹿気たお伽噺を、馬鹿な私の父に約束したのだった。
父は浜松の下垂町に住んでいた。
家は通りから少し引っ込んだところにあって、二十円ぐらいの家賃をとられそうな小ぢんまりとした借家だった。
家には鼠入らずだの、長火鉢だの、箪笥などが一通りそろえられていた。だから、たしかに今は、私の知っていた頃の父よりは遥かに楽な生活をしているのに相違なかった。「何しろお父さんは類のない怠け者だからね、こんなに構えを張っていても、とても苦しいんだよ」と打ちあけ話をした叔母の言葉もたしかに真実ではあったが、でも何といっても今は、昔よりは遥かに工面がよかったに違いなかった。
父の仕事はしかし、相も変らぬ与太仕事で、何でも質のわるい恐喝新聞の記者であるらしかった。そしてその新聞の恐ろしさに、市民の誰彼が、表面だけ父を尊敬しているように見せかけているらしかった。