轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
私は余り仁丹は好きでなかったが、そうした親切な行為の手前上、ありがたく礼を言って、仁丹をもらって、そしてそれを七、八粒ほど口に入れた。
その男は私の側に腰をかけて、私の背や肩をさすってくれた。しばらく経つと私も大分気持ちがよくなった。それに雨もどうやら小降りになって来たようであった。
「ありがとうございます、もう大丈夫です。そろそろ帰りましょう」
こう言って私が、身のまわりをつくろい始めるとその男は、
「傘ないずら、ふみ子さん」と訊いてくれた。
「ええ、さっきね」と私は、親類の間柄、何のわだかまりもなく、母の家に行って傘を借りようとしたが、中に這入れなかったことを話して、そして「この頃はおっ母さん落ち着いてるかしら」と訊ねてみた。
「ああ、この頃は折合がええちゅう話ずら」とその男は答えて、近所で傘を借りてやるから一緒に来るようにと私に言った。
私はその男の後について待合室を出た。男は駅の前の往来を左に取って一町ばかり歩いたがとある小料理屋見たいな家の暖簾を潜った。そしてそこのおかみと何か一言二言話してから躊っている私を呼んだ。
「まあお上んなさい、上って少し休んでいらっしゃい」