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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
が、それでいて、無理に目覚めさせられた若さの寂しさとでも言おうか、私の心のどこかしらに充されない寂しさがあった。それが何であるのか解らないながらも、しかも何かしら求めたい気が私のうちに絶えず燃えているのであった。
夏休みももう終わろうとしていた。
八月の二十六日か七日かのこと、私は小松屋にいた。と、そこへ、昼過ぎに祖母が叔母に用事があってやって来た。
その晩、私と祖母とは小松屋の叔父につれられて町の活動を見に行った。
活動はもう始まっていた。祖母と叔父とはやっと桟敷の後の隅っこに座ることができたが、私の座るところがなかった。で、私はずっと後の方で立ったまま見ることにした。
西洋劇の第一幕が終った。ふと気がついて見ると、私のすぐ左側に、いつの間に来たのか、紺絣に学生帽をかぶった一人の青年が私と並んで立っていた。
私はちょっとその青年を見て、すぐまた第二幕目の画面に眼を向けた。しばらくすると突然その青年が私に言葉をかけた。
「あの失礼ですが、これあなたのではありませんか。今、僕の足に何かさわったと思ったので手さぐりに探してみるとこれが落ちていたんです」