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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

賢は母の懐から離れた。けれど父の家で、叔母が母の代りに賢を待っていた。そして、これもやはり随分苦しい貧乏な生活の間に育てられたようではあるが、とにかく、叔母がしっかりしていたので、私ほどには困った目にあわされなかったようである。

叔母は非常に賢を可愛がった。「姉さんには義理がある。せめてあの子だけでも可愛がってやらなきゃ申し訳がない」叔母はいつもこう言っていたが、しかし私の眼に映る二人の間柄は、義理といったようなそんな冷たいものでばかりでつながっているのではなかった。何事につけても、叔母は賢を親身に可愛がっていた。我が子同様に、何らの隔たりのない真の愛情をもって育てていた。

だから、賢が学校に出るようになった時も、例の無籍者なので出られないとわかったとき、叔母は父の反対をおしきって、自分でさっさと自分の私生児として届けて、無事に入学させたくらいであった。

けれど、賢の教育方針については、父の誤った考え方から、賢は決して幸福ではなかった。賢は私とは違って、身体は大きいが、知らない人には物も言えないほどの内気もので、非常に温和しい親切な子であった。