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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

それに今一つ、そのことから関聯した、男の学校に這入って男と机を並べて勉強するということは、一方で普通の女より一段と高い才能を持っているような気にもなり、他方では、男と競争しても敗けはしないぞといったような男子に対する一種の復讐的な気持ちも加わっていて、自分にもはっきり意識しない虚栄心もそれに手伝っていたのである。

白旗新聞店、すなわち、蛍雪舎には、私のような苦学生がいた。藤田という青年と今一人何とかいった青年は東京中学に通っており、背のひょろ高い、何となく生気のない吉田は国民英学会の夜学に通い、ずんぐりで吃りの奥山は電機学校の午後部に通っていた。その他にも名は覚えていないが、錦城中学に一人、普及英語に二人、正則の予備校の受験科に一人といった風に思い思いの学校を選んでいた。そして昼間通学するものは夕刊を、夜間通学するものは朝刊を、といった風にしていたので、同じ家にいても三日も五日も言葉を交わさないようなことすらあった。

こうした苦学生のほかに普通の売子も三、四人はいた。

一人は「腕の喜三郎」という綽名で呼ばれている三十二、三歳の男で、紡績工場の職工だった時、機械に挟まれてぎとられたとかで右の腕が附け根から無かった。