轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
今一人は首にきたなくルイレキが出来ている上に、めっかちで、跛足で、左の手がぶらぶらして充分きかない、大分足りない男だった。それからもう一人私の記憶に残っているところでは、紅い毛を長く伸ばして、頭のてっぺんでぐるぐる捲きにした五十以上に見える爺さんがいた。爺さんは「長髪」と呼ばれていたが、仕事をしまっての帰りがけには必ず安酒をあおって来て、ちぐはぐな怪気焔をあげていた。でもこの人は剽軽ではあったが親切者で、若い売子たちに対しては親爺気取りの注意をもってよく面倒を見ていた。そんな関係からみんなに可愛がられていた。
苦学生達は大抵、新聞を歩合で売っていたが、この三人は自分で紙を買い取って売り残りは古新聞の値段の一枚二厘くらいの割で新聞店に引き取ってもらっていた。言うまでもなくそういったいい条件の下では、その代りに場所がぐんと悪いところにまわされていたから、うっかりすると食いはぐれそうですらもあった。
こういった連中の間に一人、特異な存在があった。何でも早稲田の哲学科とかを出たのだそうで、口数の少い、難かしい顔をした、いつも小さな独逸語の本を読んでいた。