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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
中にも窓下の畳は一番大きな穴を見せていたが、母はその上に長火鉢を載せた。その他のにはボール紙をあてて上から白い糸で畳に縫いつけた。そうしてやっと穴から出て来る埃を防いだ。
中村は相変らず工場に通っていた。母は少し離れた河岸の倉庫に豆選り仕事を見つけた。でも私は独りで家に取り残されることはなかった。母の熱心な願いがきき届けられて、私も附近の小学校に、無籍のまま通うことを許されたからであった。
無論私は嬉しかった。弟と別れた悲しみも学校に行くことによって忘れられた。第一その学校は、この前のような日蔭者の学校ではなかった。設備の整った堂々たる学校であったように私には思われる。子供達も総じて良家の子弟らしく、女の子などはみんな美しい衣物を着、毎日変ったリボンを着けて来、中には女中や小僧に送り迎いされるものもあった。
だがそれがまた私を苦しませた。
通い始めていくらも経たぬ間に、石版を使ってはならぬ――それは肺にわるいからというのであった――その代り鉛筆とノートをもって来いということになった。ところが、私にはそれがなかなか思うに任せなかった。中村は無論私にはかまってくれない。