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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

私は今までにも彼女に度々会っていた。彼女は若い社会主義者と一緒に貧しい生活をしながら血みどろな闘争をつづけていた。その女史がいつの間に病気になったのだろう。私は彼女を見舞ってやらねばならぬ。

「そう? じゃ参りましょう。今行きますから待っててね」

「待っています。じゃすぐ来給え」

そこで私は、大叔父の家に断って急いで出かけた。

「嘘ばっかり。またあの何とかいう男に逢いたくなったもんだから、電話なんかかけさせたんだよ」と、私が仕度をしている間に花枝さんは、わざと私にきこえるように言っているのを私はきいた。

無論私は、玄に逢えるのを嬉しいとは思った。けれど、この際は真実、久能さんのことをばかり考えていた。だから、花枝さんが何を呟こうと私は平気であった。

玄が待っているという玄の友人の下宿へ着いたのはそれから三十分ほど後であった。

友人の部屋に通されてみると、その部屋には三、四人の男が寝そべったり足を投げ出したりして何か話していた。

「今晩は、どうもお待たせしました……さあ松本さん出かけましょう」

障子を開けて閾際に立ったまま私は張りつめた気持ちで玄をせき立てた。