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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

と強い足どりで歩き出した。そして家の側の路地の入口まで来たとき、私を背から下ろして、白いハンカチで私の涙を拭いてくれた。

その夜おそく父は再び荷を負うて、とぼとぼと帰って行った。

それからというもの、私は夕方にさえなれば路地を駆け出して行って表の人通りを眺めた。それは父が迎えに来てくれているように思われたからであった。だけど父はもうそれっきり、私を迎えに来てはくれなかった。

私達はまた引越した。

引越すと、母は何よりもさきに私を小学校に通わせるために学校の校長に泣きついた。そしてやっとその願いが叶えられた。

その学校は前の学校から見るとずっと身窄らしかった。生徒にも貧乏人の子が多くて私にはまず相当した学校であった。だのにそこでは明らさまに私は邪魔もの扱いにされた。

朝、授業が始まると、教師は子供らの名前をいちいち呼んで出席簿をつける。けれど同じように出席していながら私の名だけは呼ばれない。私の隣の子まで来て私がはねられる。今考えると何でもないことだが、でも子供にとってはかなり肩身の狭い辛いことだった。そのために私はわざと遅れて行くか、でない時は、教師が子供らの名を呼んでいる間じゅう机の蓋をあけてその中に顔を突っ込んでいたり、要もない本を披いて読んでいたりした。