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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
久能の行きつけの質屋を私は知っていた。私はその質屋を訪ねた。
「へえ、確かにそれはお預りしました」番頭は私の名指した品物について語り出した。「だけど、お気の毒さまですが、先月で期限がきれましたものですからこちらで処分してしまいました。何しろ、何度かけ合ってもただの一度も利子さえ入れて下さらないものですから……」
最後に残されたたった一つの救いの綱がぷッつりときれて、泣くに泣かれぬ絶望の淵に投げ込まれてしまったのを私は感じた。
私は別にその着物が欲しかったのではない。ただ、今の場合、絶対にそれが必要だったのだ。のみならず、久能のやり方は何という不誠実だろう。今まで「主義者」というものを何か一種特別の、偉い人間のように思っていたことのいかに馬鹿らしい空想であったかということを、私は今はっきりと見せつけられたような気がした。美わしい天上の夢から、汚ないどぶの中へ叩き落されたような幻滅である。
寺の叔父が病気になって三の輪の大叔父のところへ訪ねて来た。全く衰え果てた哀れな姿で彼はあった。あれほど羞かしめられた私ではあったけれど、この有様を見てはそんな反感なんかは持ちつづけられなかった。