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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

「これ誰? 朴烈てのは?」と私は鄭にきいた。

「その人ですか。その人は僕の友達ですがね、しかしまだあまり知られてない、プーアな男ですよ」と、鄭は軽くその作者を扱った。

「そうですか? しかしこの人には何とも言えぬ力強さがありますよ。私はこんな詩を見たことがない」と、私はむしろ、この作者を認めない鄭を蔑むような気持ちで言った。

鄭はそれを余り喜ばない風だった。

「この詩のどこがいいですか」

「どこがってこたあない。全体がいい。いいと言うんじゃない、ただ力強いんです。私は今、長い間自分の探していたものをこの詩の中に見出したような気がします」

「馬鹿に感心したんですね。一度会いますかね」

「ええ、会わして下さいな。ぜひ」

いつの間に降り出したのか、外には粉雪がさらさらと静かな音をたてていた。下の廊下で時計が六時を打った。同宿の学生が何か声高に話しながら、前の階段を降りて行った。

「おや、あなた学校は?」と鄭は私に注意した。

「学校? 学校なんかどうだっていいの」と私は、こともなげに答えた。

鄭は怪訝そうに私の顔を瞶めた。

「どうしてです。あなたは苦学生じゃないんですか」