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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
髪を長くのばして油をこてこてに塗って綺麗に分け、青い絹のハンカチを首に捲いて、そして巻煙草をふかしながらよくそこいらをふらついていた。
この男と同棲することに決めたらしい時に、母は私に言った。
「とても働き者だっていう評判だよ。それに何しろ若いんだからね、うまく働いてくれさえすれば今度こそお前もわしもずっと楽になるよ」
私はいやだった。何となく悲しくさえあった。私は少しこまちゃくれてはいたがそれとなく母に反対してみた。
「あまり働きものでもないらしいよ母ちゃん、昨日だって、一昨日だって、先だって、いつでもぶらぶら遊んでいるのを私見て知ってるわよ」
母はしかし私の抗議には耳をかさなかった。昨日や一昨日遊んでいたのは風邪をひいたので工場へ勤められなかったのだとその男のために弁解して、何しろ稀らしい働き者だと、後家の小母さんが話したということを力説するのだった。
こんな話があってから三日とは経たぬうちに、その男は私達の家に来て、そのままずるずるべったりに私達の家で寝起きすることになった。
その男は小林といった。小林は沖人夫であったが稀に見る怠け者だった。で、彼を下宿させていた――事実は夫婦だったのだが――前科二、三犯もある年増の後家さんも手にあまして、それを私の母に押しつけたのだった。