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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
父が来ると母は工場を休んで父と暮した。別れなかった前のように二人は暮した。が、いつとは知らず、父の姿はまた見えなくなった。何日ぐらい父がいたのか、いつ去ったのか、それさえ印象されてないほど、私も父もお互いに無関心になっていたように思われる。
私達はまた町に舞い戻って来た。母は紡績工場に職を見つけたらしかった。私達は長屋の一軒を借りて住み、私はまた、以前の同情ある校長を戴く学校へ通い始めた。もともと何もないので楽だとはいわれないが、今度は二人っきりで、何も足手纏いもないので、生活は比較的順調だった。二人の上に何か災難でも振りかかって来ない限り、私たち母子は、淋しいながらも親しみ深い生活を続け得るだろうと考えられた。
いつまでもこのままでいてくれればいい。子供心にも私はこう祈りたいような気がした。ところがやっぱりそれが駄目だった。依頼心の深い母だ。それに、男なくてはいられぬ女だったに相違ない――今から考えて見て――母はまた若い男と同棲した。
その男は母よりも七、八つも年下で、その頃何でも二十六、七だったろう。母の知合いの後家さんの家に下宿しているというので、私も無論その男を見て知ってはいる。